『憲法とはなにか』       桜井よしこ 著    小学館

                      

 2008年7月号の「中国を読む」に

 「私たち日本人は世界全体に平和がもたらされることを心から願っていると、少なくとも国の基本方針である憲法に謳っているわけだ。なるほど、いい憲法じゃないか(多少時代に合わない部分が出てきたとしても)」

 と、書いたけれど…。さて、「多少時代に合わない部分」とは、どこでしょう?先に謝っておきます。具体的に説明できないくせに書きました。ごめんなさい。

 では、憲法と現実の齟齬はどこか。有名なところで、憲法第九条と自衛隊、「行政権は、内閣に属する」(第六十五条)と官僚制度…とあるけれど、まったく知らなかったことも、本書にたくさんあった。

 そのなかのひとつ、私学助成金や国・地方自治体からNPOへ配分されるお金について。憲法第八十七条では、「公の支配に属さない」「教育若しくは博愛の事業」に対し、「公金」の支出を禁じているのに、なぜ配分されているのか?というもの。

 アメリカの例を参考に。本書によれば、税金を徴収し国や地方自治体が改めて配分する日本に対して、アメリカはNPOへの寄付に課税を抑えて、NPOと個人・法人間のお金の行き来を活発にしている。そのためアメリカでは、1年間のNPOへの寄付金の総額が、ざっくり計算して日本の国家予算の4分の1くらいになったとか(1996年)。

 でも、アメリカ方式は不況のあおりを思いっきり受けてしまうのでは?(本書は2000年発行)なんて思う一方、日本式は国や地方自治体の人件費など余計な経費がかかっているような気が。お金の配分を決める官僚の力が無駄に大きくなるという、著者の指摘も頷ける。

 ほかにも現行憲法にない「環境権」や「知る権利」など、この本を読んでいくと、憲法を考えることで日本の課題が見えてくるのがよく分かる。「改憲」か「護憲」か、の前に、「憲法から見た日本の課題」と「日本の課題から見た憲法」の両方の方向から見直してみる必要があって…。

 で。最近思うのが、受験科目外だった「現代社会」の授業をちゃんと受けておけばよかったということ。三十路過ぎて知らない「基礎知識」の多さよ。はあ。(真中智子)



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